1985 年 20 巻 6 号 p. 416-428
起伏のある複雑な地形にも適用できる拡散予測システムを気象観測および拡散実験に基づいて提案した。このシステムでは, 第1報で提案した風系推定モデルを用いて, 地形の起伏を受けて形成される複雑な風系の中で, 第2報で提案したプルーム主軸が3次元的に変化する場合にも適用できる拡散モデルにより濃度計算を行う。
本報では, 栃木地区の拡散実験データをもとに, 拡散モデルの感度分析を行い, 各パラメータの設定値の相違による計算結果の変化を考察した。その結果, 拡散モデルでは, 拡散幅の影響が大きく, 拡散実験時のトレーサーガス濃度を正しく再現するためには, 大気安定度から推定されるPasqui11-Gifford線図での拡散幅よりもかなり大きな値を設定する必要がある。栃木地区の場合には, 大気安定度より1~2階級程度不安定側の線図から求められる拡散幅を用いて, 水平拡散幅σyについてはさらに3倍程度の希釈倍率を乗ずることが必要であることがわかった。更に, 拡散モデルと風系推定モデルを総合して考察すれば, 最終的な濃度推定値に対して風系推定モデルの影響の方が大きいと考えられた。
Garfield地区の拡散実験に提案モデルを適用して検証を行い, やはり良好な再現結果が得られた。