大気汚染学会誌
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市原地区の金属の大気腐食 (第I報)
比較的長期にわたる大気腐食と硫黄酸化物濃度との様相について
鈴木 伸立本 英機
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1986 年 21 巻 5 号 p. 386-395

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抄録

千葉県市原地域の大気腐食の実態を調査するために, 昭和43年8月から50年7月の期間に, 大気汚染と金属腐食との関連性について検討した。調査は金属試験片 (50×100mm) として鉄板, 銅板, アルミニウム板, 真ちゅう板およびトタン板を選び, それらの金属試験片を市原地域内の工場地区を背景とした4か所および山間部に1か所, 3か月間大気汚染暴露させた。暴露後, 各種金属試験片の重量変化を調べた。また同時に, 金属試験片の表面に付着した硫黄成分を硫酸バリウム法で測定した。測定地点における硫黄酸化物濃度もPbO2法で測定した。さらに表面粗さ測定器で各種金属試験片の表面粗さも調べた。その結果,
1) 金属腐食の様相は測定地点により異なり, 金属試験片の重量変化量はトタソ板 (0.00859)<真ちゅう板 (0,01769)<銅板 (0.02329)<アルミニウム板 (0.02409)<<鉄板 (0.62899) の順に増加した。
2) 比較的長期にわたる重量変化量の周期的変動からみると, 鉄板およびトタン板は夏季に重量変化量が大きくなり, 冬季に小さくなる様相を示し, 銅板, アルミユウム板および真ちゅう板は冬季に大きくなり, 夏季に小さくなる様相を示した。
3) 金属腐食を大気汚染と比較すると, 傾向的には重量変化の様相は硫黄酸化物濃度の分布の様相と一致した。
4) 特に, 冬季には真ちゅう板とトタン板を除いて, 銅板およびアルミニウム板の重量変化は硫黄酸化物濃度と相関性がみられる。
5) 大気腐食の度合は, 腐食された金属表面粗さによっても評価される。

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