大気汚染学会誌
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土壌からの大気中へのセレンの揮散
杉前 昭好
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1987 年 22 巻 4 号 p. 278-285

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抄録
土壌にセレンを亜セレン酸ナトリウムとして添加し, グルコースの共存下で培養した結果, 添加したセレンの0.26~7.296が揮散することが判明した。しかし, セレンは風乾状態の土壌, 滅菌処理をした土壌から揮散しないことから, セレンの揮散には土壌微生物が関与しているものと考えられ, 微生物の生育に影響を及ぼす因子である温度, pH, 水分, 光線, 培養雰囲気ガス, 栄養塩や抗生物質の添加とセレンの揮散量との関係について検討した。
揮散量は温度の上昇につれて増加するが, 55℃ 以上の高温になると大部分の微生物の死滅のため急減する。栄養塩の添加によって, 揮散量は増加するが, グルコース, グルタミン酸の添加による増加率は特に大きく, 無添加の場合に比べて, それぞれ44.3, 88.7倍の揮散量の増加が認められた。
微生物はセレンの揮散に関与しているだけでなく, 亜セレン酸イオンの金属セレンへの還元反応を促進するようであり, 嫌気性下で培養すると, 赤色の金属セレンが生成する。窒素通気下ではセレンの揮散がほとんど認められず, その一因は生成した不溶性金属セレンが微生物によって摂取されないため, その代謝物としての揮散性セレン化合物の揮散も減少したものと考察した。
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© 大気環境学会
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