大気汚染学会誌
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蛍光X線分析による大気粉塵中の重金属元素の測定法標準化の検討
田中 茂佐藤 宗一野上 祐作興嶺 清志松本 和子合志 陽一橋本 芳一
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1987 年 22 巻 4 号 p. 301-309

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抄録
蛍光X線分析により, 大気粉塵中の金属元素 (Mn, Fe, Ni, Cu, Zn, Pb) を測定するための標準的な方法について検討を行った。
大気粉塵の捕集には, ローボリウムサンプラーの場合はメンブランフィルター (ミリポアAAおよびRA) を用い, ハイボリウムサンプラーの場合には石英繊維フィルター (パルフレックス2500QAST) を使用した。これらのフィルターはブランク値が低く, 1日の試料採取でも充分に大気粉塵中の微量金属を蛍光X線法で測定することが可能であった。Mn, Znのような微量金属を測定するにはバックグラウンドの補正を考慮する必要があった。
蛍光X線分析の標準試料として, DDTC (ジメチルジチオカルバメート) および水酸化鉄による2種類の共沈殿標準試料を調製した。また, 市販の金属蒸着標準試料 (MICROMATTER社製) も同様に使用した。これら3種類の標準試料の間で, 各元素の蛍光X線強度の相違は認められなかった。しかしながら, 金属蒸着標準試料は耐久性の点で優れ, 1年間における各元素の蛍光X線強度の変動は1%程度であった。
川崎市で採取した同一の大気粉塵を本論文で記述された標準的な方法にしたがって, 5つの機関で蛍光X線により測定を行い, 本法について評価を行った。5機関の分析結果は, ほとんど一致し, また誘導プラズマ発光法と蛍光X線法とによる分析値の間にもよく一致した結果が認められた。したがって, 蛍光X線法を用いた本法は, 大気粉塵中の金属元素の標準的な測定法として有用であることがわかった。
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