大気汚染学会誌
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北九州地区の多環芳香族炭化水素濃度推移
嵐谷 奎一吉川 正博李 忠民児玉 泰
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1991 年 26 巻 1 号 p. 23-28

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抄録
1980年11月~1989年3月にかけて北九州市八幡西区における大気浮遊粉塵および3種の多環芳香族炭化水素の濃度を測定し, 濃度レベル, 経年変動などについて検討した。大気浮遊粉塵中の多環芳香族炭化水素の測定は, 月半ばの3日間を選び, ハイボリュームエアサンプラーを用いて, グラスファイバーフィルター上に浮遊粉塵を採取し, 試料中の多環芳香族炭化水素をアセトニトリルを用いて超音波作用にて抽出した。抽出液に塩基性アルミナを加えClean-up後, 抽出液中の多環芳香族炭化水素は分光蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフィーで分離, 定量を行った。
大気浮遊紛塵濃度の年平均値は, 年ごとに若干の変動が見られる。また, 夏に低く, 春に高い値を示した。多環芳香族炭化水素濃度は1985年より顕著に減少傾向が認められた。特にベゾン [a] ビレンは1985年より1μg/m3以下となった。また, 夏に低く, 冬から春にかけて高い値を示した。ベンゾ [a] ピレンとベンゾ [ghi] ベリレンの濃度比は1ge4年まではほぼ1であったが, 1985年以降0.5程度と減少してきた。これは, 多環芳香族炭化水素濃度の1985年以降の減少傾向と考え合わせると, この地域の多環芳香族炭化水素存在に対する発生源からの寄与に変化が生じたことを示唆しているものと考えられる。
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