抄録
わが国における浮遊粒子状物質 (SPM) の環境基準達成率は, 依然, 改善されていない。SPMについては発生源の増大による影響とともに, 気象的な要因による濃度上昇も大きなウェートを占めていると思われる。そこで, SPM高濃度に対する気象の影響にっいて, SPMの環境基準達成率が大きく異なった89年度と90年度に福岡県の3都市でのデータを基に考察した。
年間の気圧配置の出現割合とSPM濃度との関係では, 移動性高気圧の通過とともに濃度が上昇することや, 90年度には南高北低の夏型の気圧配置でも上昇する様子がみられた。
環境基準を超えるような高濃度を2年間で抽出したところ, その気象的な違いにより, 黄砂型, 夏型, 移動性高気圧型の3つに分類でき, その中でも移動性高気圧型が最も大きな寄与を示していた。また, 黄砂型では超えた日は少ないが, 汚染の広がりから環境基準達成の悪化に大きく影響していた。
これらの高濃度の時の成分濃度は, 夏型では硫酸塩が増加し, 一方, 移動性高気圧型では炭素成分や硫酸塩が平均して増加していた。これは, 夏型には光化学反応の影響が, 移動性高気圧型では逆転層による影響がそれぞれ大きく関与していることが推察された。