大気環境学会誌
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スギ, ウラジロモミおよびシラカンバ苗の乾物成長とガス交換速度に及ぼす人工酸性雨の影響
松村 秀幸小林 卓也河野 吉久伊豆田 猛戸塚 績
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1995 年 30 巻 3 号 p. 180-190

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抄録

スギ (Cryptomlma japonica D. Don) の2年生苗, ウラジロモミ (Abies homolepis Sieb. etZucc.) の6年生苗, およびシラカンバ (Betula platyphylla Sukatchev var. jqponica (Miq.) Hara) の1年生苗の乾物成長とガス交換速度に対する人工酸性雨の影響を調べた。1993年4月26日から20週間にわたって, pH4.0, 3.0および2.0の人工酸性雨 (SO42-: NO3-: Cl-=5: 2: 3, 当量比) および純水 (pH5.6) を, 1週間に3回の割合で, 1回につき18~20mmずつ, 各苗に暴露した。
pH2.0区では, いずれの樹種においても葉に可視障害が発現したが, 他のpH区では可視障害は全く観察されなかった。最終サンプリング時 (9月12日) では, いずれの樹種においても, pH2.0区の個体乾重量はpH5.6区に比べて低下した。ウラジロモミ苗では, 3.0以下のpH区の個体乾重量がpH5.6区に比べて低下した。成長解析を行ったところ, pH2.0区におけるスギおよびシラカンバ苗の個体当りの乾物成長の相対成長率 (RGR) と純同化率 (NAR) は他のpH区のそれらに比べて低下した。これに対して, ウラジロモミ苗のRGRおよびNARはpHの低下に伴って低下した。また, いずれの樹種においても, pH2.0区の暗呼吸速度はpH5.6区に比べて増加した。更に, pH2.0区におけるシラカンバの純光合成速度は他のpH区に比べて減少した。
本研究の結果より, スギ, ウラジロモミおよびシラカンバ苗は, pH2.0の人工酸性雨暴露によって成長が低下することが明らかになった。更に, ウラジロモミ苗では, pH3.0の人工酸性雨によって, 可視障害発現を伴わずに乾物成長が低下することが示された。したがって, ウラジロモミは, スギやシラカンバに比べて酸性雨に対する感受性が高い樹種であると考えられた。

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