1996 年 31 巻 6 号 p. 233-246
季節風の流れる方向に合わせて山陰地域から中国山地を経て四国に至るラインを設定し, 各場所での大気中非海塩性硫酸塩濃度や湿性降下量を1992年度の冬期に調べた。降水, 降雪の起こったパターンを冬型かそうでないかに区別しそれぞれの降下量を検討したところ, 冬型では空気が上昇しているとみられる山地への入り口付近での降下量が多いことがわかった。逆にそれ以外の場合は, 海岸部と中国山地に降下量のピークが現れた。洗浄比の検討を行った結果, 空気の上昇しているところでRainoutの効果が高いため, 洗浄比はそれ以外より有意に高くなることが推定された。
典型的な冬型が現れた12月22日から25日をモデルケースとして, このライン上での硫黄酸化物全体の物質収支を推定したところ, 山陰から中国山地をぬける間に大気中の硫黄酸化物全体の11~20%の (10kmで2%) の除去が行われていることがわかった。washoutの寄与量を見積もったところ平野部では最大68%, 山岳部では最大35%と見積もられた。