大気環境学会誌
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スギ, ヒノキ, ケヤキ苗の乾物成長とガス交換速度に対するオゾンの影響
松村 秀幸青木 博河野 吉久伊豆田 猛戸塚 績
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1996 年 31 巻 6 号 p. 247-261

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抄録

スギ, ヒノキおよびケヤキの苗木に, 自然光型環境制御ガラス室内において, 過去2年間に観測した野外オゾン濃度の平均日パターンを基準 (1.O倍) とした0.4, 10, 2.0および3.0倍の4段階の濃度のオゾンを24週間にわたって毎日暴露した。実験は1993, 1994および1995年の計3回行なった。オゾン濃度の日中12時間平均値 (日最高1時間値) における暴露期間中平均値は, 3ヶ年平均でそれぞれ16 (22), 39 (52), 74 (102) および114 (159) ppbであった。
2.0と3.0倍オゾン区におけるケヤキでは, いずれの年の実験においても可視障害が発現し, 早期落葉も観察された。両オゾン区の最終サンプリング時におけるケヤキの個体乾重量は0.4倍区に比べて減少した。'95年の実験においては, 同樹種の1.0倍区における幹乾重量も0.4倍区に比べて減少した。スギでは,'93及び'95年の実験において3.0倍区の個体乾重量は0.4倍区に比べて減少した。成長解析の結果, スギとケヤキではオゾンレベルの上昇に伴って乾物成長の相対成長率および純同化率は低下した。また,'93年の実験において, スギ及びケヤキの純光合成速度はオゾンレベルの上昇に伴って減少した。これらに対して, ヒノキではオゾン暴露による成長や光合成への影響は認められなかった。
本研究の結果より, 一成長期における成長を指標としたオゾン感受性はケヤキ>スギ>ヒノキであることが明らかとなった。また, ケヤキとスギはオゾンによって可視障害発現を伴わずに成長阻害が引き起こされることが示唆された。さらに, スギとケヤキのオゾンによる成長低下は純光合成速度の低下による乾物生産効率の低下が原因と考えられた。

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