大気環境学会誌
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硫化水素ガスに対する吸着型脱臭剤の性能検定に関する研究
矢野 壽人橋本 修左米村 惣太郎正田 誠
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1997 年 32 巻 5 号 p. 360-370

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抄録
硫黄系悪臭化合物に対する最適な吸着型脱臭剤 (吸着剤) を選定することを目的として, 硫化水素を対象として各種吸着剤について静的吸着法と動的吸着法による性能検定を行った。
静的吸着法による性能検定においては, 物理吸着剤と化学吸着剤を含む15種類の市販吸着剤について, 硫化水素吸着量を測定した。高い吸着能を有する吸着剤は吸着温度30℃, 平衡圧力50mmHgにおいて0.042~0.043g/gの平衡吸着量を示した。なお, 化学吸着剤が特に平衡吸着量が大きいということはなかった。各吸着剤に対する硫化水素の吸着型はフロインドリッヒ型に適合し, 吸着熱の値から判断すると反復使用ができる可能性を有していた。また, 比表面積, 細孔容積, 平均細孔半径, pHと吸着量の関連性を検討したが, 平均細孔半径との間に若干の相関性が認められた。
動的吸着法による性能検定においては, 前記15種類の吸着剤の中から4種類を選定し, 除去効率と破過時間を指標として検定を行った。除去効率による検定では, 静的吸着法で求めた平衡吸着量の差が, ほぼ除去効率に反映されていた。しかし, 10%破過時間 (実験条件: 入口ガス濃度100ppm, 吸着剤層高7cm, ガス線速度0.4m/sec, 接触時間0.147sec, ガス温度25℃, 相対湿度50%) による検定では, 静的吸着法で3番目に平衡吸着量が大きかった吸着剤 (平衡吸着量: 0.042g/gat30℃, 50mmHg) の破過時間は34minでしかなく, 平衡吸着量が8番目であった吸着剤 (平衡吸着量: 0.034g/gat30℃, 50mmHg) は202minで, 前者の約6倍であった。したがって, 吸着剤の性能検定においては, 静的吸着法の平衡吸着量による検定だけでは不十分であり, 動的吸着法の破過時間による検定が重要であることが明らかとなった。
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