大気環境学会誌
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大気中に排出直後の排出ガス中の窒素酸化物の酸化反応 (I)
伊達 新吾阿久津 好明新井 充田村 昌三
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1997 年 32 巻 5 号 p. 341-359

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抄録

環境大気中に排出直後のNOxのNO→NO2変換挙動を明らかにするため, NOxおよびメタンの酸化が関与する反応モデルを作成した。反応モデルの妥当性を検証するために, 環境温度については光照射実験を行って反応条件を変化させた場合について実験値と計算値の比較を行い, 高温領域については流通系反応実験の文献値と計算値の比較を行った。その結果, 環境温度および高温領域において反応モデルの妥当性が示された。
次に, 感度計算を行うことによって, 環境温度 (298K) および高温領域 (873K) での高濃度NOxのNO→NO2変換に及ぼす重要な反応機構について検討した結果, 温度298Kにおいては, 反応2NO+O2→2NO2を含めた8つの無機反応が重要であることがわかった。そして, 温度873Kにおいては, NOの酸化には反応2NO+O2→2NO2は関与せず, 主にCH4の酸化過程で素反応NO+HO2→NO2+OHにより進行することがわかった。一方で, CH3の結合反応によって生成するC2H6の酸化が関与する経路は重要でないことがわかった。また, NO2消費反応については, NO2+H→NO+OHだけでなく, NO2+hν→NO+O (3P), NO2+O (3P) →NO+02, NO+OH+M→HNO2+Mも重要であることがわかった。
最後に, 作成した反応モデルを用いて, 温度一定・体積一定と仮定した場合の反応計算を行い, 短時間内でのNO2濃度の経時変化を計算した結果, 温度領域が500~700℃の範囲内では, 排出ガス中のCH4の存在によりNOが急速に酸化され, 排出口近傍でのNO→NO2変換挙動が無視できないことが示された。

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