九州地方において, 降水に含まれる硫酸イオン, 硝酸イオン, アンモニウムイオンおよび水素イオンの降下量を, 27地点の実測濃度データと118地点のAMeDAS降水量データを用いて推定した。推定法としては距離の逆数を重み係数とする補間による方法を用いた。この方法による濃度および降水量推定値は実測値との対応もよく, 推定精度は良好であった。降下量はメッシュ毎に推定し, 地域的および季節的に考察を行った。
硫酸イオンの降下量は降水量との関係が強いのに対し, 硝酸イオンの降下量は降水量との関係が小さく地域汚染源の影響が見られた。アンモニウムイオンについては降水量と地域汚染源の影響がともに見られた。
桜島火山起源の汚染物質は, 梅雨期と夏期に卓越する南西風により九州山地南東部に輸送され, また大陸起源の汚染物質は, 冬期に卓越する北西風により九州北部に輸送され降下すると考えられた。