大気環境学会誌
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東アジア地域における自然・人為起源硫黄化合物からの沈着量推定
雲内変質過程を考慮した長距離輸送モデルの開発と評価
山本 浩平吉田 知央荒木 真星野 順至笠原 三紀夫
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2000 年 35 巻 1 号 p. 21-35

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抄録

東アジア地域における硫黄化合物の挙動解明, 沈着量評価を目的として長距離輸送モデルを開発した。本モデルは, 大気中における諸過程について, 観測された気象データをパラメータとして記述することを基本としたものであり, 特に湿性沈着過程について, 物質の雲内への取ワ込み過程, 雲内洗浄過程, 雲底下洗浄過程のそれぞれについて, 雲内凝結水量の評価および雲内変質過程の詳細な検討によりモデル化した。また従来あまり考慮されてこなかった自然起源物質についてもモデルに取り込み, 60km×60km格子上における大気中濃度, 沈着フラックスを求めた。長距離輸送モデルの入力として, 風速場については東アジア地域の地形条件を考慮した客観解析法を用い, また発生源データについては新たに作成した自然・人為起源硫黄化合物排出量インベントり一を使用した。自然起源の硫黄化合物としては火山以外に海洋や土壌から放出されるジメチルサルファイド (DMS) と土壌や植物から放出される硫化水素 (H2S) を取り上げている。これを用いて硫黄化合物の日本における沈着量を求め, 更に実測データとの比較検討したところ, 結果はおおむね良好であり, モデルの実用性が確かめられた。

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