大気環境学会誌
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濃尾平野の初冬季高濃度大気汚染
気象学的構造における関東との差異
吉門 洋魚崎 耕平
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2000 年 35 巻 1 号 p. 63-75

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抄録

濃尾平野を中心とする愛知・岐阜両県の大気汚染データを用い, 1994-1996年度の3年分について気象データと合わせて高濃度解析を行った。他の主要な都市域と同様に, 長期的に高濃度が問題となっているのは浮遊粒子状物質 (SPM) および窒素酸化物 (NOおよびNO2) であり, 季節的には11-12月に集中するため, 解析はこの季節にしぼった。
高濃度汚染に関与する気象学的構造を解明するため, SPM濃度が地域中で最も高いレベルにある名古屋市中心部の測定局を代表局として高濃度日 (日平均100μgm-3以上) 36日を抽出した。対象期間2か月×3年のうちの20%に当たるこれらの日の平均状況を調べた。代表局に対して周辺部の主要測定局の状況を比較すると, 名古屋から南南東方向に知多湾東岸に沿って延びる工業地域では同等の高濃度が出現し, しかも夕方から夜の最高濃度の出現は南へ行くほど遅い。この方角以外の局では濃度レベルがかなり低い。このような濃度分布とその変動は, 日中も弱い北西風が持続する傾向に加えて, 夕方以降の接地層の安定化とともに, 平野東方の丘陵地帯からの冷気流が成長し, 名古屋から南南東の上記帯状地域で北西風と収束することにより, 目立つものとなっている。
これと比べ, 関東の場合は, 東京より内陸側に形成される広いよどみ域で高濃度が現れるのであり, 高濃度形成プロセスが全く異なっていることがわかった。

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