大気環境学会誌
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インフェレンシャル法による森林への硫黄化合物の乾性沈着量の推定
SO2の乾性沈着に及ぼす葉面のぬれの影響
高橋 章佐藤 一男若松 孝志藤田 慎一吉川 邦夫
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2002 年 37 巻 3 号 p. 192-205

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抄録

群馬県の山地スギ林における1年間 (1997年10月~1998年9月) の連続観測データをもとに, インフェレンシャル法を用いて硫黄化合物の乾性沈着量を推定した。その結果から, SO2の乾性沈着に及ぼす葉面のぬれの影響について検討した。結露計を用いたぬれ時間の観測結果から, 寒候季 (10月~3月) の観測期間に対するぬれ期間の割合は17%であるのに対して, 暖候季 (4月~9月) のそれは60%に及ぶことが明らかになった。米国で開発された推定方法を用いた場合, ぬれ期間にクチクラ抵抗 (Rcut) を0sm-1と設定することで, SO2の沈着速度は, ぬれの影響を考慮しない場合に比べ, 寒候季にば約2倍, 暖候季には約3倍に増大した。この沈着速度と大気濃度の観測結果から, 硫黄化合物の年間の乾性沈着量は11.1mmolm-2yr-1と推定された。この推定値は, 観した硫黄化合物の正味の林内沈着量 (12.4mmolm-2yr-1) にほぼ一致し, 妥当なものであると判断された。これらのことから, 湿潤なわが国の森林では, SO2の乾性沈着を支配する要因として, 葉面のぬれの影響が極めて重要であることがわかった。

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