抄録
酸性雨等による器物影響のモニタリングを目的に, 横浜市磯子および山梨県道志 (山間部) において, バルク採取による雨水成分の測定および金属試験板の溶出量, 腐食量の測定を行った。この測定データをもとに三宅島火山ガス放出前後の状況を比較した結果, 次の知見を得た。
火山ガス放出後1年間 (2000年9月~2001年8月) の磯子の雨水の平均pHは, 放出前1年間 (1999年9月~2000年8月) に比べ0.56低下し, 非海塩起源SO42-, 非海塩起源Cl-の年間沈着量はそれぞれ2.1倍, 1.9倍増加していた。また, これに対応して, ブロンズ板からのCu2+, Pb2+, Zn2+の溶出量, 銅板からのCu2+の溶出量, 炭素鋼板からのFe3+の溶出量も, 火山ガス放出後1年間は放出前1年間に比べ1.7~2.6倍多くなっていた。また, この金属の溶出に伴い, 火山ガス放出後の銅板の重量は著しく減量していた。
一方, 道志 (山間部) は磯子に比べ雨水のpHが高く, 非海塩起源SO42-等の沈着量およびブロンズ板からのCu2+, Pb2+, Zn2+の溶出量は磯子の1/2~1/3程度と少なかった。しかし, 火山ガス放出前後の傾向は磯子とほぼ同様であり, 山間部にも三宅島火山ガスの影響が及んでいることが窺われた。