大気環境学会誌
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東京都の全降下物に含まれる硫酸イオンの硫黄同位体比から見た三宅島噴火の影響
赤田 尚史柳澤 文孝瀧上 豊本山 玲美川端 一史矢吹 貞代金山 晋司川端 明子上田 晃
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2004 年 39 巻 1 号 p. 21-30

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抄録

2000年6月に東京都の南約150kmに位置する三宅島が17年ぶりに噴火した。この噴火により放出された火山ガスが海からの風により運ばれ, 日本各地で高濃度の二酸化硫黄ガスや酸性度の強い降水が検出された。そこで, 東京都文京区で全降下物を採取し, 硫酸イオンとその硫黄同位体比を測定することにより, 三宅島排出火山ガスの降下物への影響について検討した。その結果, 非海塩性硫酸イオン濃度, および降下量が増加した時期は, 三宅島の火山活動が活発であった時期であり, また850hPa面の高層風が三宅島方面より関東地方に向けて吹き込んでいた時期と一致する。南からの風が弱まる冬季になると非海塩性硫酸イオン降下量も減少傾向になる。非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比は, 8月以降から高くなる傾向を示し, 同じ期間に三宅島より噴出した火山灰に付着している硫酸イオンの硫黄同位体比に近い値を示した。同時期の群馬県太田市の降下物と埼玉県和光市のエアロゾルの非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比も8月以降に高くなる傾向を示している。これらのことから, 三宅島の噴火は文京区の降下物に大きな影響を与えた可能性が高い。また, この時期の全降下物への三宅島より噴出された硫黄の寄与率を硫黄同位体比から試算してみたところ, 最大で90%を超えるという結果であった。

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