抄録
水素スタンドの事故時における漏洩水素ガスの短時間ピーク濃度の性状を明らかにするために風洞実験を行った。対象とした水素スタンドはオンサイトで高圧水素 (40MPa) を製造するタイプである。漏洩源に設定した蓄ガス器ユニット建屋模型からは水素ガスを模擬したトレーサガスを放出し高応答の濃度分析計を用いて計測した。漏洩水素ガスの風下への拡がりは可燃範囲の下限値である4%ピーク濃度の風下水平方向への到達距離 (4%Lpeak) を指標とした。その結果, 大漏洩時 (配管5mm破断, 20秒漏洩を想定) には, 漏洩水素ガスが水平風下方向および鉛直上方の広範囲に拡散し風速3m/sにて4%Lpeakは24mを超えること, 小規模な漏洩の場合は, 漏洩開口径が1mm以下において4%Lpeakはスタンド敷地境界内 (6m) に留まることを示した。また, ガス放出時間を短縮すると4%Lpeakは顕著に減少することから, 早期の漏洩検知とバルブ遮断が漏洩事故対策として重要である。さらに建屋と外気との換気状況の差異により異なる4%Lpeakが得られることから建屋の適切な換気設計が漏洩事故リスクの最小化に効果があることを示した。