大気環境学会誌
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領域気象モデルRAMSによる東アジア域の気象再現性
吉田 保衡弓本 桂也鵜野 伊津志
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2006 年 41 巻 5 号 p. 235-248

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抄録

領域気象モデルRAMSを用いて, アジア域を対象に2001年の通年計算を行い, その結果を各種の気象観測データと比較することにより, 東アジア域でのRAMSの気象場の再現性を評価するとともに, CTMへの入力条件としての妥当性の検討を行った. 本研究では, 中国から日本にかけて13ヶ所の評価領域を設定して, 気温, 風速, 降水量の時間変化についてシミュレーション結果と観測値との比較を行った. モデルは気温, 風速, 降水量ともに各地域の時間変化の特徴を良くとらえており, Skill score等の解析から, シミュレーション結果は十分に再現性があることが示された. モデルは, 各季節の降水分布の特徴もよく表現しており, 年間を通じた観測の総降水量の地域分布の傾向を再現していた. しかし, モデルは5日積算降水量で10mm以下の弱い降水を過小評価しており, 日本域の夏季と秋季で月積算降水量に約20-40%のモデルバイアスが見られ, CTMでの沈着量の見積もりへの影響が示唆された. 各領域の積雲降水量について解析した結果, 中国北部や朝鮮半島北部では夏季のみでなく春季でも降水量の24-36%が積雲起源となっていた. これらの結果は, CTM内での積雲の取り扱いが, 物質収支や濃度レベルに大きな影響を与える可能性があることを示唆している.

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