大気環境学会誌
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バックグラウンド濃度を考慮、したNOx積分プルーム反応・拡散モデルとその性能評価
北林 興二
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2007 年 42 巻 5 号 p. 283-291

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抄録
近年, 大気環境規制強化や行政による指導強化などにより, 工場や自動車などから排出される大気汚染物質の濃度がかなり低下してきており, 天然ガスを燃料とする発電所では排出ガス中のNOx濃度が5ppmを下回る例も出てきた。また, 都市域に建設される道路トンネル排気中のNOx濃度も1ppm程度である。このように, 環境濃度 (バックグラウンド濃度 (BG)) と排出源濃度の差が比較的小さい場合には, BG濃度を考慮せずに拡散濃度を計算し, 計算濃度を単純にバックグラウンド濃度に加えることは厳密には正しくないし, また, 反応性のガスの場合には反応をも取り込んだ拡散濃度予測モデルが必要である。特に, NOxのように大気中で急速に反応する物質に対しては, 拡散とBGガス成分との反応を同時にシミュレートするモデルが必要である。
著者はNO, NO2, O3, Oの4種類のバックグラウンドガスと排出源からのNO, NO2, O3ガスとの大気中での反応を考慮できるNOx積分プルーム反応・拡散モデルを開発し報告してきた。今回, このモデルの性能を詳細に検討するべく, 風速, 大気安定度, 排出源高さ, および, バックグラウンドガス濃度等によりNO, NO2, O3の地上濃度がどのように変化するかを浮力のない排出源モデルに対して計算し, 検討した。その結果, 排出源の高さ, 風速, 大気安定度, 及びバックグラウンド濃度によってNO2濃度に顕著な変化が生ずることなどが明らかとなった。このモデルによって得られた, 各要素による地表面濃度の変化は, 拡散パラメータや反応速度などから合理的に説明することができ, このモデルの妥当性が示された。
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