大気環境学会誌
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大気中硫黄および窒素化合物の乾性沈着推計
沈着速度推計法の更新
松田 和秀
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2008 年 43 巻 6 号 p. 332-339

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抄録

東アジアにおける最近のフィールド研究から得られた知見を基にして, 硫黄および窒素化合物の乾性沈着を推計するための沈着速度 (Vd) 推計法を構築した。推計法を構築するにあたり, 特に, SO2とNH3の湿潤表面への取り込み促進効果, 粒子成分の森林へのVd推計法に留意し改良を行った。さらに, これらの改良に伴い空気力学的抵抗 (Ra) の推計精度がVdの推計精度に与える影響が相対的に大きくなることを考慮して, Ra推計法の精緻化を行った。Raの最も重要な要素である摩擦速度 (u*) の推計法に関し, 超音波風速計による測定から得られた微気象データを用いて検証を行った結果, u*推計法は大気安定度が異なる昼夜間別に推計しても測定値を良く再現することができた。構築した沈着速度推計法の評価のため, 森林および草地に対し, 国内の遠隔域に位置する利尻佐渡関岬, 梼原, 辺戸岬において, 2004年4月1日から2005年3月31日の1年間の沈着速度を推計した。その結果, SO2とNH3の湿潤表面への取り込み促進効果が再現されており, かつ, 森林で推計された粒子成分のVdがより実測直 (文献値) に近いレベルになったことが確認された。Vd年平均値の地点間差とガス状成分間の季節変動の相違を解析した結果, HNO3はRa+Rb, SO2はRa+RbとRc, NH3はRcにそれぞれ大きく依存していることが分かった。

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