棚田学会誌
Online ISSN : 2758-4364
Print ISSN : 2436-1674
論文
「棚田米」のブランド構造に関するモデル分析
菊地 稚奈
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 25 巻 p. 24-42

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抄録
本研究は、近年の棚田米のブランド化の経緯をトレースし、その付加価値の状況や構造を明らかにするとともに、今後どのようなブランディングが棚田の持続に効果を発揮しうるのかについて提言し、棚田保全に寄与することを目的とする。  コメのブランドは古くから存在するものの、流通の自由化やブランド化が進められたのは近年のことである。また棚田米に関しては、その語が一般に定着するようになったのは棚田保全の活動が広がる2000年以降である。  棚田米の流通の状況を把握する目的で、道の駅に対するアンケートおよび、ふるさと納税ポータルサイトの分析を行なったところ、棚田米は品質が高いと認識されていることや、一般米より高い価格で取引されるなど、一定のブランド価値が成立していることが分かった。  そこで、市川・清須美ブランドモデルをベースに「棚田米」のブランド構成要素を抽出するワークショップを行い、棚田米ブランドモデルを構築した。その結果、棚田米のブランドを形作る上でのコアバリューは「地域に裏打ちされたシンパシーを感じる特別な美味しさ」であること、ただし美味しさの評価は実際には絶対的な評価軸を持たず、美味しさは機能的ベネフィットのみでなく情緒的ベネフィットにより強化されて成立すること、特に棚田米については生産地の人や景 観との結びつきによる情緒的ベネフィットがブランド価値の成立に強く働いていることが明らかになった。
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