2010 年 24 巻 1 号 p. 105-111
要旨:症例は78歳,男性.2003年4月肝後区域に径26 mm大の肝腫瘍を認め当科紹介された.本人希望により他院を紹介したが,自己判断で治療は受けなかった.2005年前医にて同部位に腫瘍を指摘され,同年12月再度当科を紹介された.CTでは肝後区域を中心に肝門部,尾状葉へ及ぶ不整形で境界不明瞭な低吸収域を認め,門脈右枝は腫瘤により狭窄し肝右葉は著明に萎縮していた.肝内胆管癌の術前診断にて2006年2月肝拡大右葉切除術を施行した.病理検査では,拡張胆管内に異型細胞の乳頭状増生を認め乳頭腺癌と診断されたが,末梢胆管にまで上皮内進展がみられ,胆管内乳頭状腫瘍の範疇に含まれるものと考えられた.患者は術後3年を経過し再発を認めず外来通院中である.胆管内乳頭状腫瘍は比較的新しい概念であり予後良好と考えられるが,無治療にて長期間経過後に治癒切除しえた報告は稀である.同疾患概念確立の一助となると考え今回報告する.