2010 年 24 巻 1 号 p. 112-118
要旨:74歳男性,糖尿病,高脂血症,胆摘後で近医通院中であった.血液検査で肝機能障害を指摘され来院した.精査では総胆管が約12mm,Wirsung管が3~4mmと拡張していたが,Santorini管は1~2mmでWirsung管とSantorini管は癒合していなかった.十二指腸乳頭には露出腫瘤型の腫瘍を認め生検でadenocarcinomaが検出された.EUSでは総胆管と主膵管への進展が疑われた.膵管非癒合を伴う十二指腸乳頭部癌の診断で全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った.病理学的所見ではModerately differentiated adenocarcinoma,od,panc0,du1,t1,pN0であった.術後経過は良好で第14病日に退院し,術後20カ月現在,無再発生存中である.医学中央雑誌の1983-2009年にて「膵管非癒合」,「膵管癒合不全」あるいは「pancreas divisum」と「十二指腸乳頭部癌」で検索すると膵管非癒合を伴う十二指腸乳頭部癌の報告は6例のみであり,貴重な症例と思われたため報告する.