抄録
症例は23歳,男性.1カ月前より発熱を認め他院で精査を受けたが不明熱の診断のもととくに治療せず経過していた.1週間前より呼吸苦を認め当院を受診,経胸壁・食道心エコー上大動脈弁は二尖弁であり,左冠尖側に25mmの vegetation が付着し,高度の弁逆流を認めた.僧帽弁前尖には一条の逆流が認められ,穿孔が疑われた.感染性心内膜炎(IE)の診断のもとただちに抗生剤治療を開始したが,6日目の TEE 検査で僧帽弁逆流(MR)の進行,肺うっ血の憎悪を認めたため翌日準緊急手術となった.大動脈弁は左冠尖と無冠尖が癒合した二尖弁であった.その弁尖に直径15×30mm大の vegetation を認めた.弁尖を切除し僧帽弁を観察すると前尖弁腹に直径3mmほどの穿孔を認めた.穿孔部をトリミングしたのち,直径1cmの Xenomedica patch で補填,大動脈弁はSJM23で弁置換術を施行した.いわゆる kissing vegetation により生じた僧帽弁穿孔に対して経大動脈弁アプローチで僧帽弁形成術を施行しえたので若干の文献的報告を加え報告する.