要旨:本稿では癌幹細胞の基本的特徴を紹介し,我々がこれまでに行ってきた研究内容を併せて解説する.
癌幹細胞とは,自己複製能と多分化能を有する癌の源となる細胞である.また,ニッチ(niche)と呼ばれる周囲環境は癌幹細胞の中心的な働きを担っている.
我々は,肝細胞癌幹細胞の表面マーカーとしてCD13を同定し,CD13陽性細胞の局在と低酸素マーカーの発現局在の一致が認められ,肝癌の再発にCD13陽性細胞が重要な役割を果たしていることを報告した.
一方,癌細胞へiPS因子を遺伝子導入することで癌細胞のリプログラム化に成功し,iPC細胞と名付けた.このiPC細胞は,抗癌剤への感受性が高められ,造腫瘍性を抑制させることが示された.さらに,iPS因子の導入によらず,3種類(mir-200c,mir-302s,mir-369s)のマイクロRNAを癌細胞へ導入することで,リプログラム化する手法を開発した.
今後,癌幹細胞研究をさらに推進し,癌の早期発見・予防,癌幹細胞の確実な制御法の開発,抗癌治療効果向上を目指すことが必要である.