要旨:鑑別診断を要する胆嚢疾患に関して胆嚢壁肥厚を中心に概説する.胆嚢壁肥厚は良悪性疾患の様々な病態が含まれる.このうち実地臨床において頻度が高く,胆嚢癌との鑑別が問題となるのは慢性胆嚢炎,黄色肉芽腫性胆嚢炎,胆嚢腺筋腫症,膵・胆管合流異常の胆嚢過形成などである.これらの疾患はUS,EUS,CT,MRIなどで特徴的な画像所見を呈することが多く,画像所見と病理所見を詳細に対比して病態を理解する必要がある.一方,高度な炎症所見あるいはCA19-9などの血清腫瘍マーカーが高値を呈する症例では鑑別診断に難渋する場合がある.近年,鑑別困難例におけるENGBDを用いた胆汁細胞診,胆嚢壁肥厚部分に対するEUS-FNAの有用性が報告されており,今後の展開が期待される.