2015 年 29 巻 4 号 p. 800-807
症例は76歳,男性.黄疸にて発症し,遠位胆管癌の診断となった.術中所見で多発肝転移が認められたため,切除不能と判断し胆道ステントを留置した.術後,gemcitabine/cisplatin併用療法を行い,肝転移巣の消失が認められた.化学療法を継続し,肝転移の再発は認められなかったが,FDG-PET検査にて原発巣周囲のリンパ節への集積増大が認められたため,初回手術より33カ月後に膵頭十二指腸切除術を施行した.術中所見では肝転移は認められず,切除標本の病理組織学的診断ではT2N0M0, fStage IBであった.術後10カ月経過し,無再発生存中である.現在,化学療法によりdown stageが得られた切除不能胆道癌の治療方針について一定の見解はない.しかし,Conversion surgeryによって予後が改善する可能性があり,定期的に画像評価を行い,外科切除の可能性を検討することが重要である.