抄録
多発リンパ節転移と肝転移を伴っていたが,集学的治療により良好な予後を得られた胆嚢癌の1例を経験したので報告する.症例は77歳,男性.初診時に大動脈周囲リンパ節転移と肝S4aに孤在性肝転移を伴う切除不能胆嚢癌と診断された.ゲムシタビン(Gemcitabine:GEM)とシスプラチン(Cisplatin:CDDP)併用療法(GC療法)を施行したところ,肝転移の消失と原発巣およびリンパ節転移巣の縮小を認めた.胆嚢摘出術,肝S4a+5切除,膵頭十二指腸切除,大動脈周囲リンパ節を含む広範囲リンパ節郭清を施行し,完全治癒切除(R0)手術が可能であった.術後補助化学療法を施行し,初診時より4年5カ月が経過した現在も無再発生存中である.切除不能胆嚢癌に対する手術,化学療法を含む集学的治療は,予後を改善する可能性がある.