2017 年 31 巻 2 号 p. 221-227
安全,正確に手術を施行するためには術前に十分に画像を精読し,腫瘍の位置や切離する血管などについてイメージしておく必要がある.術前のこのような作業は外科医であれば誰もが経験することであり,指導医から繰り返し指導される修練事項である.しかし特に胆道癌の手術においては,肝臓や肝門部,膵臓の解剖学的に複雑な構造を理解するためには相当年数の修練が必要であり,経験年数の異なる外科医間においても情報の共有は困難であった.しかし近年では画像技術の驚異的な発展で,比較的容易に3D-CT画像を入手することが出来るようになり,これらを用いた術前シミュレーションが可能になっている.教室では2003年からドイツMeVis社のLiver Explorerを用いて術前シミュレーションを行ってきた.出血量や合併症発生率の低下を認め安全性の向上に寄与していると考えられた.胆道癌の手術は難易度が高く,合併症発生率も高いため,十分に術前シミュレーションを行い安全で正確な手術を行うべきである.