2018 年 32 巻 4 号 p. 794-800
69歳,女性.健診で肝機能異常を指摘された.画像検査で胆嚢および右肝管から遠位胆管にかけて腫瘍が認められた.十二指腸側腫瘍縁は胆管内で可動性が示唆されたが確定するには至らなかった.胆管内腔へ腫瘍が脱出した胆嚢癌,または遠位胆管癌と胆嚢癌の衝突癌と術前診断し,肝切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を予定した.術中所見からも遠位胆管内病変は腫瘍栓と考えられ,総胆管を切開して胆管内腫瘍を分割摘出した.胆嚢管は右肝管に合流し,左右肝管は低位で合流していた.肝臓側腫瘍縁は肝外であったため,胆嚢摘出・胆嚢床切除・肝外胆管切除術を行った.病理組織学的所見では,胆嚢体部から発生した乳頭腺癌が右肝管に合流する胆嚢管を経て胆管内腔へ発育していた.進行度分類はStage Iであった.術後5年経過し無再発生存中である.胆道合流形態の破格を背景に発生した胆嚢癌で,進展形式の点で興味深い症例であったので報告する.