胆道外科は高度な解剖学的理解と精緻な手術手技,さらに的確な周術期管理を必要とする分野であり,長期にわたる修練と経験の積み重ねが不可欠である.本稿では,第61回日本胆道学会学術集会会長講演として,筆者が胆道外科医を志してから約40年にわたり歩んできた臨床・研究・教育の軌跡を振り返る.
外科医としての初期には,肝切除黎明期における試行錯誤や術死の経験を通じて,肝切除における解剖学的理解と安全性確保の重要性を痛感した.その後,国立がんセンター中央病院および名古屋大学第一外科における肝胆膵外科研修では,胆道再建を伴う肝切除や高度進行胆道癌に対する拡大手術を多数経験し,胆道外科医としての基盤を形成した.
また,基礎研究および臨床研究への取り組みを通じて,日常診療に内在する疑問を科学的に検証し,エビデンスとして発信する姿勢の重要性を学んだ.肝門部胆管癌に対する拡大肝切除や血行再建,Pringle法遮断時間に関する無作為比較試験などは,具体例である.
2014年以降は愛知医科大学消化器外科において,高難度肝胆膵手術体制の整備,若手外科医の教育,さらにはロボット支援手術の導入に取り組んできた.
本講演では,これらの経験を通じて得られた胆道外科の本質と,症例報告や手術記事における「描く文化」の重要性を再確認し,次世代の胆道外科医へのメッセージとして提示する.