1997 年 11 巻 4 号 p. 335-340
膵頭十二指腸切除術(PD)が施行された下部胆管癌症例における,後方剥離面因子(ew)の規定について検討した.対象は,PDが施行された下部胆管癌6例と他疾患6例,計12例である.検討部位は十二指腸乳頭から約3cm肝側で,染色はhematoxylin eosin染色にて行なった.下部胆管癌4例は胆管後面切開を行なわずに,2例はそれを行なってew判定の正確さを比較検討したところ,前者ではそれが正確に判定できたが,後者では後方組織が左右に分かれて固定されるため,その判定が困難であった.一方,他疾患6例の後方剥離面組織の実測値は,すべて5mm未満であった.以上より,下部胆管癌PD施行例におけるew判定の正確さを求めるために,腫瘍占居部位の胆管は切開しないことを提案したい.