抄録
総胆管結石に対する内視鏡的治療である乳頭バルーン拡張術(EPBD)と乳頭括約筋切開術(EST)の治療成績を比較検討した.対象は同一の術者がEPBDおよびESTを施行したそれぞれ21例で,両群ともに胆石は全例で完全採石し得た.採石に要した内視鏡の平均回数は,EST群1.52回,EPBD群1.42回と有意差は認めなかった.合併症については,両群とも出血,穿孔などの重篤なものはみられず,EST群で1例に膵炎,2例に胆管炎を認めた.EPBD群では明らかな合併症は認めなかった.治療翌日の血清アミラーゼ値は,上昇がみられなかったものはEST群3例(14.3%),EPBD群5例(23.8%),300U/l以上に上昇したものは,EST群14例(66.7%),EPBD群6例(28.6%)で,EPBD群の方がアミラーゼ値の上昇が有意に低かった.EPBDはESTに比較して手技が簡便で,熟練を必要とせず安全で有効な内視鏡的治療法であると考えられた.