胆道
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十二指腸乳頭部癌のリンパ行性進展経路を連続性に捉えることのできた1切除例
北川 裕久谷 卓萱原 正都林 泰寛高村 博之藤村 隆西村 元一太田 哲生
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2006 年 20 巻 1 号 p. 56-63

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抄録

十二指腸乳頭部癌で, 原発巣からのリンパ行性進展経路を病理組織学的に捉えることのできた症例を経験したので報告する. 患者は80歳男性, 主訴は特にない. 高血圧症で近医通院中に, 肝機能障害にて腹部CTを施行され, 下部胆道閉塞を指摘された.内視鏡検査, 生検で潰瘍型の乳頭部癌と診断された.画像上, リンパ節転移を示唆する所見はなかった.切除標本の病理所見では, 膵頭後面のリンパ管内に広く癌細胞が存在した. 後面上部では, 癌細胞は後上膵十二指腸動脈に沿って連続性にみられたが, 前面の前上膵十二指腸動脈周囲や胃十二指腸動脈近傍にはみられなかった. 後面下部では, 後下膵十二指腸動脈, 前下膵十二指腸動脈に沿って連続性に上腸間膜動脈の下膵十二指腸動脈分岐部へと進展していた. 当症例は, 乳頭部癌のリンパ行性進展を連続性に捉えることができ, 乳頭部癌のリンパ流域(lymphatic basin)を理解するのに貴重な症例であると考えられた.

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