抄録
胆汁粘度を規定する因子を解明する目的で, 臨床例89例で粘度測定し, 胆汁中コレステロール, リン脂質, 胆汁酸, ヘキソサミン濃度およびLithogenic Index(LI)との関係を検討した.また, 胆汁粘度に影響を及ぼす因子として共存する, 荷電物質(電気伝導度)とpHの影響について実験的に解析した. その結果, 胆汁中ヘキソサミン濃度と粘度は r=0.82と高い相関を示したが, 胆汁脂質やLIとは相関関係がなく, 胆汁中ムチンが粘度を規定する胆汁成分であることが示唆された. また, 電気伝導度やpHの変化は, 胆汁粘度に影響を与えた.細菌培養陰性群はヘキソサミン濃度と正の相関を示したが, 陽性群には明らかな相関は認めなかった. すなわち, 胆石生成に必要なムチンと胆汁粘度を規定しているムチンとは, 明らかな因果関係を認めなかった. したがって, 胆汁粘度を規定する因子としては, 胆汁中ムチンや共存する荷電物質, pH以外に他の諸因子の存在も考えられた.