谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
〈特集2〉市販前から市販後まで一貫した安全性評価
1. 開発段階における定期的安全性最新報告(DSUR)への期待
佐藤 淳子
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2010 年 2010 巻 12 号 p. 120-122

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抄録

1. DSUR導入の経緯

 市販後においては、医薬品のより安全な使用、より適正な使用を目指し、世界で集積された安全性情報を1冊の冊子にまとめられるようになっている。いわゆる市販医薬品に関する定期的安全性最新報告(Periodic Safety Update Report、PSUR)である。PSURは、1996年に日米EU医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use, ICH)において合意され、日本では、1997年3月に「市販医薬品に関する定期的安全性最新報告(PSUR)について(平成9年3月27日薬安32号)」として通知、導入されるに至っている。

 欧米においては、開発中の医薬品についても、市販後のPSURのような安全性のSummary report制度が存在しており、年1回の提出が求められている。日本においては、昨年度までは開発段階における安全性のSummary reportは存在しない状況にあったが、平成21年4月より、治験薬重篤副作用等症例定期報告書として、6ヵ月ごとに重篤副作用等症例の発現状況一覧の提出が求められるようになった。しかしながら、本邦における治験薬重篤副作用等症例定期報告書は、ラインリストのみであり、欧米において求められているSummary reportとは、記載されている内容がかなり異なっている(日本で導入された治験薬重篤副作用等症例定期報告書がこの形態となった経緯については、治験のあり方検討会の議事録等(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/09/s0919-8.html)を参照)。

 昨今、医薬品の開発戦略として、国際共同開発が増加している。上記のような異なる制度の下では、1つの国際共同試験において、3通りの安全性のSummary reportを作成するような非効率な作業が発生することになる。また、発現頻度の低い副作用の検出や、副作用発現のリスク因子解析など、より多くのデータ集積が有用な場合もある。このような観点から、地域別の安全性Summary reportを作成するより、1成分につき1冊の情報としてまとめた方が、作業の効率化やより適切な安全対策が図れるものと考え、2006年9月、開発段階における定期的安全性最新報告(Developmental Safety Update Report、DSUR)導入に際するconcept paperがまとめられるに至った(http://www.ich.org/LOB/media/MEDIA3302.pdf)。以後、ICHにおいて、E2Fとしてコーディングされ、DSURにかかるガイドラインが検討されてきている。

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© 2010 安全性評価研究会
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