谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
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「食の安全」の総論として「化学物質の安全性」について考える
菊池 康基
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2010 年 2010 巻 12 号 p. 151-157

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抄録

 この数年、食の安全を脅かす事件が続発している。中国産ウナギの禁止薬物汚染、中国産野菜の残留農薬、餃子の農薬汚染、牛乳へのメラミン混入、農薬やカビによる汚染米の不正販売、産地偽装等々枚挙にいとまない。昨年10月には、エコナ(食用油、花王㈱)の特定保健用食品(トクホ)承認取り下げが大きな話題となり、食の安全を考えるうえで大きな問題をつきつけた。また、2010年1月にはアルコールの販売・広告規制指針案がWHO執行理事会で採択され、春のWHO総会で承認される由、アルコールの害を減らすことが世界中の目標になろうとしている。

 私は、長い間、医薬品の安全性についての研究に関わってきた。今回は食品の安全について、どう考えどう向き合えばよいか、日頃の私の考えをお示ししたい。

 われわれが日常口にする、穀物、野菜、肉、魚貝類は、科学的には全て化学物質である。種々多様な化学物質を食品として摂取することによって、生命活動を維持している。したがって、食の安全とは、すなわち化学物質の安全性をどのように考えるかということになる。そこで最初に、地球上に誕生した生命が、その時時の環境にどのように適合して進化し、また生存環境中の化学物質とどう向き合ってきたかを考えることから始めたい(表1)。

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© 2010 安全性評価研究会
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