谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
〈特集1〉医薬品の安全性試験 教科書から学べないもの
2. 無毒性量NOAELについてのQ&A
門田 利人
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2010 年 2010 巻 12 号 p. 21-27

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抄録

 無毒性量、NOAEL、ノアエルという用語を聞いたことがないという毒性研究者がいたら、間違いなくその方は毒性研究者としては「もぐり」です。認定トキシコロジストのバイブルであるキャサレット&ドールの「第7版トキシコロジー」には、4ページ(p116~119)に渡っての説明があります。

 日本の医薬品開発分野に限って言えば、この用語がICH 1で議論され始めてから20年は経ち、毒性関連の書籍やガイドラインに顔を出してから40年以上は経過しています。しかし、今でも、セミナー企画会社や業界専門書籍発行会社から、講演や執筆の依頼があります。その理由は簡単で、無毒性量を算出することがとりもなおさず毒性を判断し、医薬品の安全性を評価することと等しいからと理解しています。すなわち、無毒性量そのものを知りたいのではなく、総合的な毒性評価についての様々な疑問を解きたいという要望だと思います。そんな命題を、数時間のセミナーや数十ページの原稿で語りつくせるわけはありません。したがって、本稿の執筆についても、必ずしも積極的ではなかったのですが、製薬会社の新薬開発に携わってきた人達にとって、無毒性量をめぐる諸問題については行政(審査)側との長い長い議論(語るも涙)の歴史があり、後進の方々に少しは知っておいて欲しいという想いと、基本的な考え方や見方(少し個人的にはなるかもしれないことをお断りして)についてはお話できると思い筆をとりました。

 谷学の会員や社内の人達からよくいただく無毒性量に関する質問を中心に、本機関誌名にちなんでQ&A形式で話を進めて行きます。なお、医薬品開発における無毒性量:NOAEL(ノアエル)であることを、まず、前提として頭においていただければと思います。

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© 2010 安全性評価研究会
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