2011 年 2011 巻 13 号 p. 1-7
1.医薬品分野におけるレギュラトリーサイエンスの振興の重要性
狭義のレギュラトリーサイエンスという言葉は、日本語で規制科学と訳されることからもわかるように、環境衛生や食品衛生領域の化学物質の安全基準の数値を設定するための科学、あるいは医薬品の安全性のうち非臨床試験に関する薬理学といったところに限定されてきた印象がある。ところが、臨床の現場で用いられる医療用品は、古典的な医薬品、低分子化合物に限らず生物製剤(バイオテクノロジー製剤)、医療機器1)と多様であり、それぞれの特徴を考えた開発手法、前臨床研究、臨床試験、市販後調査の方法が存在する。従って、医療用品のレギュラトリーサイエンスに関しては、研究開発から承認後の実際の臨床の現場での使用に至るまでの各段階において手当てがなされていくべきなのである。すなわち、医薬品、食品、環境物質など、人体などに影響がある物質の適正かつ安全な使用のために、その基準値、安全性・有効性の評価、対応、上位では行政施策やシステムのあり方について、実験室での研究(ウェット研究)や社会学的研究・疫学研究(ドライ研究)、臨床研究を通じて検討し、また行政施策や社会に対して研究成果や考察を情報発信していくことが重要である。