2011 年 2011 巻 13 号 p. 56-59
日々の臨床現場において薬剤性肝障害(DILI, drug induced liver injury)は高頻度で遭遇する有害反応であり、場合によっては生命へ危険が及ぶ、見逃してはならない反応である。DILIの検出のために使用されているマーカーの代表的なものは、AST、ALTといったトランスアミナーゼであり、臨床的に最も使用されており、信頼性の高いものであるが、特異性に欠ける部分など問題点も存在している。たとえば、早期の臨床試験において対象となる被験者は主に健康人である。元々健康で疾患を持たない被験者に対し薬物を投与する際には安全性の確保がきわめて重要であり、何らかの障害が発生した場合には、不可逆的変化になる前に発見することが求められる。しかし早期段階の試験におけるAST、ALTの変動は非特異的と考えられるものが多く、DILIの早期発見のためのマーカーとして必ずしも満足できるものではない。本稿ではこれらについて2010年日本トキシコロジー学会学術年会シンポジウムで発表した内容を再構成して述べる。