谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
〈特集3〉ファーマコビジランス
2.薬剤性肝障害への臨床からの取り組み−臨床試験における薬剤性肝障害早期検出の努力−
熊谷 雄治
著者情報
解説誌・一般情報誌 フリー

2011 年 2011 巻 13 号 p. 56-59

詳細
抄録

 日々の臨床現場において薬剤性肝障害(DILI, drug induced liver injury)は高頻度で遭遇する有害反応であり、場合によっては生命へ危険が及ぶ、見逃してはならない反応である。DILIの検出のために使用されているマーカーの代表的なものは、AST、ALTといったトランスアミナーゼであり、臨床的に最も使用されており、信頼性の高いものであるが、特異性に欠ける部分など問題点も存在している。たとえば、早期の臨床試験において対象となる被験者は主に健康人である。元々健康で疾患を持たない被験者に対し薬物を投与する際には安全性の確保がきわめて重要であり、何らかの障害が発生した場合には、不可逆的変化になる前に発見することが求められる。しかし早期段階の試験におけるAST、ALTの変動は非特異的と考えられるものが多く、DILIの早期発見のためのマーカーとして必ずしも満足できるものではない。本稿ではこれらについて2010年日本トキシコロジー学会学術年会シンポジウムで発表した内容を再構成して述べる。

著者関連情報
© 2011 安全性評価研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top