谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
レクチャー1 再生医療
1-1 再生医療・細胞治療に使用する細胞加工物の品質・安全性評価の原則と造腫瘍性の考え方
三浦 巧佐藤 陽治
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2014 年 2014 巻 16 号 p. 1-10

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抄録

 再生医療・細胞治療(再生医療等)を実用化するためには、製品となりうる細胞の品質が保証され、治療における安全性が確保されることが極めて重要である。当たり前のことではあるが、再生医療・細胞治療のリスクとベネフィットを勘案し、リスクゼロを求めるあまり実用化を遠ざけるような不合理な規制を設けてはいけない。本稿では、ヒト細胞加工物*1 の規制の原則とされる「リスクベースアプローチ(Risk-Based Approach)」の考え方について概説する。 また、現在、再生医療等に用いる細胞加工物の原料・原材料*2 として、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)やヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)が使用されようとしている。これらヒト多能性幹細胞は、動物体内に移植された際に腫瘍を形成する能力、いわゆる「造腫瘍性」を元来の特性として保持しているため、多能性幹細胞を原料とした細胞加工物においては、未分化細胞や造腫瘍性細胞の混入・残留による異所性組織形成や腫瘍形成及びがん化を防止することが求められており、最終製品の造腫瘍性の評価と管理が新規かつ重要な課題となっている。本稿では、現在ヒト多能性幹細胞加工製品を含むヒト細胞加工物の開発が精力的に進むなか、その造腫瘍性評価の現状と課題についても概説する。

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© 2014 安全性評価研究会
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