2016 年 2016 巻 18 号 p. 3-7
医薬品の非臨床における安全性評価は、これまで実験動物などを用いて行われてきたが、ヒトiPS (induced pluripotent stem)細胞の登場により、今まで入手が困難だったヒト細胞の利用が可能となった。創薬プロセスの早い段階で医薬品候補化合物の安全性や有効性などについてヒトiPS細胞を用いてスクリーニングできれば、創薬の効率化や成功確率の向上、安全性の確保などまさに創薬プロセスの変革が実現できる。
JiCSA(Japan iPS Cardiac Safety Assessment) は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いる安全性評価法の研究を行い、細胞シート標本を利用した標準プロトコルを開発し検証を行ってきた。さらに米国FDA/HESI(Food and Drug Administration/Health and Environmental Sciences Institute)によるコンソーシアムCiPA(Comprehensive in vitro Proarrhythmia Assay)とプロトコルなどの情報を共有することにより国際標準化を推進している。
本稿では、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた安全性薬理試験系の開発および国際標準化に向けた動きを概説する。また、国際ブラインド試験などの動向やICH(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)ガイドライン改訂への展望について紹介したい。これにより今後、ヒトiPS細胞を用いた心臓安全性評価の早期実現が期待される。