谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
レクチャー1 心血管系安全性評価
1-3 分子から心機能まで −イオンチャネルと安全性評価の係わり
鶴留 一也
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2016 年 2016 巻 18 号 p. 8-16

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抄録

 創薬現場における薬物の安全性を確認する作業において、致死性の高い不整脈の発生を防ぐ目的で行われる心機能に対する安全性評価は重要な役割を担っている。様々な薬効を持つ化合物が、致死性の高い不整脈を誘発することが分かってきたためだ(表1)。実際に一旦発売された薬物においても、催不整脈効果が判明したため撤回された例が挙げられている。

 特に致死性の高い不整脈であるTdP(Torsades de Pointes)の誘発を未然に防ぐため、催不整脈効果の予知性のある試験方法が求められた。TdPの誘発には心電図におけるQT波間隔の延長が強い相関を示すことが分かり1)、さらにQT間隔延長に対しては心筋に発現するカリウムチャネルの一種であるhERG(human ether-a-go-go-related gene)チャネルの機能低下が影響を及ぼすことが示されてきた2-4)

 こういった背景から、2005年にはICH(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)においてQT間隔延長の非臨床評価(S7B)やQT/QTc間隔延長と催不整脈作用の臨床的評価(E14)といったガイドラインが定められ、それらを基に現在まで臨床前のhERG電流への抑制的効果や、臨床試験時のQT間隔延長効果などを調べる安全性評価試験が創薬の現場で行われている。

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© 2016 安全性評価研究会
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