抄録
これまでの化学物質は、法規制に基づく管理を行っていればそれで「安心」という時代から、事故が起きないように、あるいは起こったとしても被害を最小限に食い止めることが求められる時代に変わってきている。そこには、次々と生み出される化学物質すべてを法規制で対処することがもはや不可能になったという現実だけでなく、社会・企業・作業者の「安全」、「安心」に対する意識の変化が影響している。一方、安全対策を実施するにも、その対策の必要性を説明するための客観的な根拠の重要性が増しており、化学物質の安全管理にとって基礎となる物質の評価も定量的な指標が使用されるようになってきた。
本稿では、基礎的な化学物質の安全管理の概念と、作業者の安全確保を目的とした各種管理手法を紹介し、化学物質の評価指標としてよく用いられているOEL(Occupational Exposure Limits:職業曝露限界値)、それに密接な関係のあるADE・PDE(Acceptable Daily Exposure・Permitted Daily Exposure:一日曝露許容量)について、どのような情報やデータから算出できるのか、また、算出に当たりどのような留意点があるのかを概説する。