抄録
非臨床における安全性評価の主な目的は、1)ヒトに適用する初回投与量とその後の増量計画を設定すること、2)毒性の標的となる恐れのある臓器を特定し、その毒性が可逆的なものであるかの検討を行うこと、3)臨床でのモニタリングを実施する際の安全性評価項目を見出すことである。また、曝露量および投与量に基づく安全域を予測するために、臨床試験に先立って、適切な動物モデルを用いたファーマコキネティクス(pharmacokinetics: PK)試験を実施し、吸収、血中濃度およびクリアランスに関する情報がある程度得られていなければならない。このように、非臨床安全性試験は臨床試験の開始と継続を含めたバイオ医薬品の開発の可否を判断するうえで必要な要件である。しかしながら、ヒトに適用されるバイオ医薬品の多くは動物で免疫原性を示し、産生が誘導された抗薬物抗体(anti-drug antibody: ADA)により安全性試験結果の適切な評価を妨げる場合がある。このように、通常の動物モデルではADAが陽性の場合が多いため、ヒトにおける免疫原性を予測することはできない。
本稿ではヒトと動物モデルにおける免疫原性の比較、ICH S6(R1)ガイドライン、免疫原性が非臨床におけるPKおよび安全性評価に及ぼす影響とその対処等について概説する。なお、本稿は、2012年に筆者が執筆した総説1)に安全性評価研究会2014年冬のセミナーの講演内容および最近の知見を加筆し、修正したものである。