谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
イメージング技術
2.非臨床試験における各種イメージングモダリティの有用性
寳来 直人杉山 大介
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2019 年 2019 巻 21 号 p. 58-66

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抄録
 現代の臨床において、代表的なイメージングモダリティ(以下、モダリティ)であるX線、内視鏡、computed tomography(CT)やmagnetic resonance imaging(MRI)を使用せずに正確な診断を下すのは容易ではない。診療科によってモダリティの位置づけ、必要性、使用方法などは異なるが、日々の診療で各種モダリティは医師に重要な情報を提供する。実際に本邦における臨床現場では、病床数の増加に伴い、CT及びMRIの保有率は高くなり、500床以上の大規模医療施設ではCTで96.7%、MRIで82.7%と高い保有率を誇る1)。国際比較をしても本邦におけるモダリティの普及率は高く、OECD加盟国における人口100万人あたりの平均保有台数はCTが24.6台、MRIが14.3台であるのに対し、本邦ではそれぞれ101.3台、46.9台である1)。これら臨床での普及率が示すとおり、近年の高度化された臨床現場においてモダリティの利用は必須と考えられる。
 一方、非臨床分野では毒性試験ガイドラインでイメージングを使用した評価が推奨されていないことや、毒性試験では最終的に剖検及び病理組織学的検査を実施することから、これまでの新日本科学 安全性研究所(以下、SNBL DSR)での実績をみる限り、イメージングを試験に組み込む必要性は高くはなかった。しかし、近年ではICHガイドラインをはじめレギュレーション上で動物実験の3Rsの原則への遵守が謳われ、動物福祉を考慮した非臨床試験の実施が本邦のみならず、世界規模で求められている。また、毒性試験の領域において古くから臓器特異性の高いバイオマーカーに関する研究が各臓器において様々なされてきた結果、肝障害マーカーとしてmicroRNA2)、腎障害マーカーとしてKIM-13)及びcystatin C4)、肺障害マーカーとしてSP-D5)などいくつかの臓器特異性の高いバイオマーカーが見出されてきた。しかし、これらの新規バイオマーカーを含め、反復投与毒性試験ガイドラインで記載されている検査項目は器官重量、病理組織学的検査を除き、いずれも十分な臓器特異性及び検出力を有しているとは言えず、これらの検査項目を基に臓器障害を判断するには限界があることも事実である。他方、イメージングは各種臓器を選択的に観察することができることから、少なくとも臓器特異性については疑いようのないバイオマーカーと言える。以上のとおり、動物福祉及び臓器特異性の高さから近年、動物を非侵襲的かつ経時的に観察可能なイメージング技術の重要性は非臨床分野においても高まっており、SNBL DSRにおいて各種モダリティを使用した試験の実績及び問合せは増加している。
 本稿では、主に大動物において各種モダリティを用いた試験の基礎データを紹介し、それぞれの特徴とそれらを使用することでどのようなデータが得られるのかを臓器別に紹介することにより、非臨床試験における各種モダリティの可能性を考察する。
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© 2019 安全性評価研究会
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