抄録
消化管毒性は一般に生命維持機能との関連は限定されるが、繰り返し発現した場合は、患者の生活の質(QOL)を大幅に低下させ、服薬アドヒアランスの低下や、身体的、精神的な状態の悪化を引き起こす可能性がある1)。下痢などの患者のQOLに影響を及ぼす可能性がある消化管毒性は、おおよそ700種類もの薬剤が関与していると言われており2)、稀に下部消化管合併症、胃・十二指腸潰瘍、消化管出血及び穿孔の発症など、重篤な消化管毒性が生じることがある3)。また、臨床試験で重度の消化器症状が発現した場合は、忍容量を超えているとの判断から、最高用量の制限毒性となり得る。このような消化管毒性を回避するために、非臨床毒性試験において、臨床での副作用を精度良く予測することが重要になる。
安全性評価研究会の2018年春のセミナーでは、消化管毒性とそのバイオマーカーの現状を共有し、Q&A形式での情報交換を行った。本稿では、その際の講演内容と議論した内容を紹介する。