谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
SEND
1.SENDオーバービュー:安全性データの蓄積と利活用
佐藤 玄
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2021 年 2021 巻 23 号 p. 1-6

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抄録

 最近、データ駆動型創薬(data-driven drug discovery/development)という言葉をあちこちで耳にするようになった1-4)。同じ非臨床領域のうち、薬理や薬物動態のデータは何となく応用できそうな気はするが、毒性試験の電子データも使えるのだろうか。私はいわゆるデータ専門家ではないが、ここ数年、Clinical Data Interchange Standards Consortium(CDISC)の開発した非臨床のデータ標準であるStandard for Exchange of Nonclinical Data(SEND)に関する業務に携わるうちに、素人なりにデータについて考える機会を得た。

 規制対応要件としてのSEND作成作業では、Food and Drug Administration(FDA)に受け取り拒否されないことが最も重要である。実質的に世の中に存在するSENDデータのほとんどを作成しているContract Research Organization(CRO)の多くでは、FDAから五月雨式に発出される様々なルールに対応すべく莫大な労力を払っていることが、本特集号を読んでも明らかである。しかし、本質的な目的は「FDAに拒否されないこと」ではなく、「FDAが使いやすいデータを作ること」ではないだろうか。規制当局は審査業務の効率化・高質化にデータを使いたいと考えており、そのために作成ルールを設定している。立場は異なるが、製薬メーカーでもSENDデータを用いて毒性評価や創薬活動を行いたいと考えた時には、その目的に応じたデータの格納方法や、用語の統一等を考えるであろう。すなわち、規制当局対応であっても、社内外でのデータ利活用であっても、「使いやすいデータ」を目指して作成すべきであるという点において根っこは同じである。

 本稿では、私のSENDとの出会いについて紹介し、SENDは標準データであるにもかかわらず作成者による相違(バラつき)の発生する余地があり、バラつきの本質を暴くために外部コンソーシアムで格闘したこと、そして、そうした経験に基づく使いやすいデータについての考えを述べる。さらに、媒体名の標準化に向けた事例を紹介した後、冒頭で出てきた「データ駆動型創薬」へのSENDデータの応用について私見を述べる。SEND作成業務に直接関係しない方々にもきっと興味を持っていただける内容と自負している。

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© 2021 安全性評価研究会
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