2021 年 2021 巻 23 号 p. 72-80
非臨床毒性試験及び臨床試験において、臨床検査は、化合物の生体への影響を明らかにする目的で実施される。臨床試験では非臨床試験のように病理組織学的検査の実施は困難であり、臓器への器質的な障害が起こる前に認められる機能的な障害や生理的な適応反応を捉えるという観点から臨床検査は重要である。非臨床毒性試験で変動した臨床検査パラメータ、特に組織障害との関連性を示すパラメータは、臨床試験を安全に進めるための有用なバイオマーカーとなる。各検査を実施することで生体の状態を示す多項目のデータが得られるが、その一方で得られたデータをどう解釈し、生体の状態を推察するかが重要となる。そのため、各項目がどの臓器の変化に関連しているか、どのような場合にどう変化するのかなど、それぞれの特徴や変動の原因を理解した上で毒性学的意義を判断しなければならない。特に多臓器に分布する酵素等については、アイソザイムや分布の種差を考慮する必要がある。さらに、臨床検査パラメータの変化における毒性学的意義の考え方については、各パラメータと臓器との関連性を理解することに加え、被験物質の薬理作用、対象疾患などを考慮する必要があるため、毒性判断の明確な線引きは困難である。
本稿では臨床検査として、「尿検査・血液学的検査・血液生化学的検査」を取り上げ、一般的に測定される臨床検査パラメータとその関連臓器について紹介する。また、毒性学的意義の考え方について既承認医薬品の申請資料を参考に紹介する。